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ブレインズハック2016.08.04

【学ぶ力】第6回:イノベーションって何?

これまで世界の景気をけん引していた中国経済が停滞し、製造業の過剰設備によって大量生産される中国製品が世界にデフレ圧力をかけていると、世界中で大きな不安を呼んでいます。

その辺の話は他のメディアで読んでもらうとして、今回はちょっと違う視点で中国企業を見てみましょう。

アメリカのマサチューセッツ工科大学が、「MIT 50 Smartest Companies」というランキングを毎年発表していますが、2016年版が6月に発表されました。

https://www.technologyreview.com/lists/companies/2016/?set=601733

このランキングは、「創造的なテクノロジーが効果的なビジネスモデルに結び付いている世界のトップ企業」です。

 

 

さて、日本の企業は何社入っているでしょうか?

答えは3社。トヨタ、ファナック、LINEです。ただし、LINEは韓国のNaverの子会社です。

一方、中国の企業は5社も入っています。

Baidu(百度)、Huawei(華為技術)、Tencent(騰訊)、Alibaba(阿里巴巴)、Didi Chuxing(滴滴出行)。

 

Baiduは中国最大の検索サービス、Huaweiは中国最大手のモバイル通信機器メーカー、Tencentは中国最大のSNS、Alibabaは中国最大のネット通販会社、Didi Chuxingは中国最大の配車サービスの会社です。

 

 

「中国はコピー文化・模倣文化の国で、世界のいいとこ取りをしているだけだ」

「中国企業は政府の規制に守られており、急成長する国内市場から外国企業を排除できるから有利だ」

というやっかみの声も日本ではいまだに根強く、中国市場で儲からなくなって撤退する日本企業も増えました。

しかし、アメリカ企業や海外メディアの反応を見ていると、客観的に中国企業の質を評価すべき時が来ていると感じます。

2年前の本なので少し古くなりましたが、著者の主張の内容はともかく、中国の先進企業のこれまでの経緯を見るには、次の本がお薦めです。

 

 


 

リバース・イノベーション2.0

リバース・イノベーション2.0

徐航明著

CCCメディアハウス (2014/11/27)


 

リバース・イノベーションとは、「新興国で生まれた技術革新や、新興国市場向けに開発した製品、アイデアなどを先進国に導入して世界に普及させる」という概念で、経営学者のビジャイ・ゴビンダラジャン氏が2012年に提唱したものです。

著者が言う「リバース・イノベーション2.0」とは、グローバル企業が新興国で起こしたイノベーションを先進国に還元する「リバース・イノベーション」の時代から、中国などの新興国の企業が担い手となってイノベーションを起こす新たな時代に入った、という考え方です。

 

著者が主張するリバース・イノベーション2.0の特徴は次の4つです。

・最先端ではなく“最適な”技術

・社会ネットワークによる大衆のイノベーション

・独自ではなく、グローバルリソースからの価値創造

・技術と社会の両輪のイノベーション

 

『重要なのは、先端技術で自己満足するのではなく、いかにユーザーを満足させられるかということだ。それをなしうるのは、必ずしも最先端の技術ではなく。実用的で安い最適な技術だ。加えて、参入するタイミングも重要だ。導入期からリスクを負って参入するのではなく、市場が成熟期に入るころに参入するのが一つの選択肢といえる』

 

この「最先端ではなく“最適な”」というところが重要らしいのですが、Huaweiの携帯基地局や、有名なBYDの電気自動車を例として、高価で高度な最先端設備や最先端の技術が無くても成功できると説明しています。

イノベーションとは何か?という定義に関わる話ですね。Tencentは「模倣+改良=イノベーション」と言っているらしいですが。

 

そして、電動バイクの中国での普及を例に挙げて、著者は次のように語ります。

『中国では、個々の企業が主導するイノベーションとは異なり、企業、経営者、消費者、行政の“密な連携”による巨大な社会ネットワークが、試行錯誤によってゼロから一つの産業を創り出すことがまれではない。

それを支えるのは膨大なマス市場の可能性と、部品を提供する部品メーカーの存在だ。規律正しいサラリーマン技術者や営業マンが市場を創出するのではない。経営者であり消費者でもある個人資本家の多くが、自らの嗅覚で市場の鉱脈を嗅ぎ当て、果敢に市場に切り込んでゆくのである』

 

昨日のウォールストリートジャーナルで、Didi Chuxingがウーバーの中国事業を買収し、ウーバーがDidi Chuxingの筆頭株主になるという記事が出ていました。

深圳の経済特区から生まれた零細企業が巨大企業へ成長し、チャイニーズ・ドリームが現実となった中国。

アメリカン・ドリームを未だに実現し続けているアメリカ。

世界の2大ドリーム・メーカーとなったアメリカと中国が、大競争しながらも協業して世界市場を狙う時代になったのでしょう。

 

 

一方、日本は大企業を中心に海外企業の買収を継続的に実施していますが、一気に市場制覇を目指すようなドリームという点では、ソフトバンクの孫さんが一人気を吐いているように見えます。日本では、資本力と技術力のある大企業が中心となって、従来型の研究開発とM&Aによる海外市場拡大をコツコツ続けていくようです。

「リバース・イノベーション2.0」は、中国がまだ新興国と言われる時代の言葉であり、もはや死語でしょう。イノベーションって何?と悩むことに意味はありません。

それよりも、グローバルリソースと巨大な中国マス市場を活用した中国発の製品やサービスが世界市場を席巻する前に、日本の大企業がいま内部留保している300兆円と空前の低金利をどう活かすかが、これから20年後の日本人の生活を決めるのでしょうね。

 

⇒次回に続く

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