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ブレインズハック2016.03.23

【学ぶ力】第2回:良書を読もう

モバイル・ネットワークの進化とデータ処理の高速化によって、ヒトのコミュニケーションや産業の姿が劇的に変わりつつあります。それはこれからの人のライフスタイルや企業の商品開発・マーケティング戦略を大きく変化させ、世界的な淘汰と富の格差の拡大が進むことを暗示しています。あの銀行業界ですら、少子高齢化が進む前に襲ってきたフィンテックの到来に戦々恐々しています。

こんな時代に直面して「自分は果たして生き残っていけるのだろうか?」と不安に思う方は、テクノロジーの進化の歴史と今後の方向性や考え方のヒントを得られれば、多少なりとも落ち着いて、現在進行中の第4次産業革命の大波を乗り越えていけるかもしれません。

そんな方に是非読んで頂きたい本をご紹介します。

 


 

未来に先回りする思考法

 

『未来に先回りする思考法』佐藤航陽 著

ディスカヴァー・トゥウェンティワン刊(2015年8月)


 

日本人が書くビジネス書はアメリカの理論の焼き直しや紹介が多く、何度も読み直したい良書が極めて少ないのですが、この本からは著者の知性の深さが強く感じられて、久し振りに心が躍りました。

テクノロジーと未来についての詳細は本に譲りますが、私も日頃から疑問に思っていた、社員研修によく採用されるビジネススキルについても、著者は明快に切り込んでくれました。

『ロジカル・シンキングには、すべての情報を得ることができないという「情報」の壁と、意思決定者が持つ「リテラシー」の壁というふたつの障壁が存在します。』

例えば、新規事業のプレゼンでいかにロジカルに経営陣に説明しても、その時にライバル10社が同じことを検討していたら、市場はすぐに競争過剰に陥って値下げ合戦に巻き込まれてしまうが、世界中のライバル企業の情報をリアルタイムに得るのは不可能だ、と彼は言います。

さらに、FacebookによるInstagramの巨額の買収に対して当初誰もが懐疑的だったことを例にあげて、意思決定する経営陣にその分野の深い理解と経験がなければ意思決定を誤る、とも言っています。

だから、意思決定をする際にはロジカル・シンキングを疑って、次のようにすべきだと語ります。

『将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行うことが、未来へ先回りするための近道です。』

『リアルタイムの状況を見ると自分も含めて誰もがそうは思えないのだけれど、原理を突き詰めていくと必ずそうなるだろうという未来にこそ、投資をする必要があります。あなた自身がそう感じられないということは、競合もまたそう感じられないからです。』

相手の説得や頭の整理にはロジカル・シンキングはとても有効なのですがね。

ところで、この「未来へ先回りする」という考えが彼の理論の要になっています。

テクノロジー業界は変化が速すぎて計画が全く役に立たないので、そもそも最初から計画を立てることを放棄して、変化が起きた瞬間に即座に対応し、修正を重ね、変化していけばいいという「リーン・スタートアップ」と呼ばれる戦略が流行したそうです。

ところが、競合がみんな同じ考えで「リーン」に無駄なく動くから、競争が激化するので収益が上がらず、もはや「リーン・スタートアップ」は戦略として意味をなさない、と彼は言います。

『変化を見抜くことが難しい時代だからこそ、社会全体のパターンを見抜き、的確に未来を予測し、先回りできた企業と個人が最終的には勝利を収めます。』

この「社会全体のパターン」を見抜くことがとても重要なのですが、詳細は本に譲って、ここでは日常の現実のパターンを理解するための彼の手法を紹介しましょう。

『物事がうまく行かない場合、パターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんどです。サンプルが必要だと頭ではわかりながらも、感情的な理由から十分な数が集まる前にあきらめてしまう。目標の達成を阻んでいるのは、実は人間の感情というフィルターだったりします。(中略)一回一回の成否に一喜一憂せずに、パターンと確率が認識できるまで「実験」だと割りきって量をこなすことが重要です。』

この本には他にもたくさん示唆に富んだ話が語られています。「テクノロジー業界という生き馬の目を抜く苛烈な業界独特の話だ」と笑い飛ばしてもよいですが、テクノロジーがビジネスや生活を大きく変えていくと信じる方なら、とても読みやすい文章で書かれていますので、是非一読されることをお勧めします。

最後に、彼がGoogleのマネージャーから聴いて衝撃を受けた話が書かれていたので、ご紹介しましょう。

Googleの社員は就業時間の20%を自分の好きなプロジェクトやアイデアに時間を使うことを認められています。彼がGoogleのマネージャーにそのルールを会社が採用した理由を尋ねたところ、それは優秀な社員を獲得してキープするための福利厚生ではなく、意外な答えが返ってきたそうです。

Googleのような優れた企業の経営者でも常に正しい決断をし続けられるとは限らず、経営者がすべての市場を正しく把握することは困難です。ネット市場は変化が速いからトップの判断のミスで途端に時代に乗り遅れるリスクがあるので、

『数万人いる社員の業務時間の20%をそのリスクヘッジにあてている』

ということでした。

良書との出合いに感謝!

 

⇒次回に続く

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