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ブレインズハック2016.04.26

【学ぶ力】第3回:毒を食らいますか?

 

世の中には数え切れないほどの自己啓発本や、モチベーションを高めるノウハウ本が出回っています。

「いまの状況から脱したい」「良い方向に自分を変化させたい」「とにかく成功したい」「いまより幸せになりたい」「やる気を起こしたい」という人の思いがとても強い表れなのでしょうね。

昔から自己啓発本やモチベーションの本によく書かれているテーマは、「ポジティブ思考」に関する本です。何事もポジティブに考えれば成功するのだから、いつもポジティブに考えるにはこうすればいい、という内容が多いようです。

最近は「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」という本に代表される「アドラー心理学」の解説本が大人気ですね。人の教育に携わる人なら、アドラーは深く考えるべき良い題材です。彼の理想に共感できる人には人生のバイブルになるでしょう。

このコラムは「学ぶ力」がテーマですので、世間の風潮には流されたくない、深く学ぶことによって自分なりに未来を予測して切り開きたい、と思っているビジネスマンにとって読んでおいて損はない本は、ご紹介したいと思っています。

たとえ、それが人によっては読むに堪えない、叫びたくなるかもしれない「毒」のような本でも・・・。

 


 

ネガティブな感情が成功を呼ぶ

 

「ネガティブな感情が成功を呼ぶ」

トッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナー著

草思社刊(2015年6月)


 

まるで世の自己啓発本に喧嘩を売っているような題名の本ですが、原書の題名は「THE UPSIDE OF YOUR DARKSIDE」(あなたの心の暗い面の良いところ)です。

『我々は、人間の本質の中の暗い側面を機会として捉えることを、基本的で健全な態度として提唱したい。「ネガティブ」と呼ばれている面も、自然な人間心理の構成要素である』

『どんな心理状態も何らかの役に立つ。(中略)その時に生じた思考や感情は、外界の出来事に対する単なる反応ではなく、状況に応じて提供されたツールと見るべきである。つまり自分の心の状態をいいとか悪いとか、ポジティブとかネガティブとか決めつけるのをやめて、「その場の状況にとって有益かどうか」と考えるようにした方がいいということだ』

『ネガティブな資質を、抑圧したり、無視したり、隠したりしてはいけない。それらに気づき、価値を理解し、ここぞという時に活用すればいい。それによって幸福を手に入れる可能性は広がる』

 

もちろん、著者はポジティブ思考がダメだと言っているのではありません。逆に、ポジティブ思考によって良い結果が生まれることが多いことは認めていますし、ポジティブ8割:ネガティブ2割ぐらいの割合でいいと言います。

ただ、怒り・嫌悪・後悔・退屈・恐怖・不安・疑念・悲しみといったネガティブな感情を理解して、うまく使えと言っているのです。特に、詳細にこだわる仕事や、秩序だった分析的思考を必要とする仕事の場合は、「少しだけ不幸」の方が「非常に幸福」に勝るそうです。

著者は、「ホールネス」(wholeness)という考え方を提唱していますが、ホールネスを持つ人の能力は次のようなものです。

『何かが起きた時、自分の態度を(ネガティブなものもポジティブなものも含め)直面している試練に適応させ、与えられた状況の中で最善の結果を得る能力である。こういう人たちは、人格の明るい面と暗い面の両方を引き出して使うことができる。つまり真面目さと不真面目さ、情熱と冷静さ、外向性と内向性、利他的と利己的などほぼすべての特性を利用できる』

『ストレス下の自分の感情をきちんと把握できる人は、行動を起こそうとする気持ちが湧いてくるのを利用できる。(中略)自分の感じているものが、罪の意識なのか、恥の感情なのか、怒りなのか恐怖なのかがよくわからないと、その不快さに耐えることが難しい』

 

著者は、アメリカ大統領の中で最高の実績をあげたセオドア・ルーズベルトの特徴を「テディ効果」と呼んでいます。それは人間関係にまつわる不快感を避けることなく対処する能力であり、多くの著名なリーダーに見られる傾向だそうです。

詳細は本に譲りますが、テディ効果の3要素は「マキャベリズム」「ナルシシズム」「サイコパシー」であり、普通なら忌み嫌われる人のダークな側面です。

『できうる限りは、善を行うべきだろう。しかしどうしても必要とあれば、邪悪な行動を選ぶ覚悟がなくてはならない、とマキャベリは言う』

『(ナルシシズムは)自分の価値を重視し、自分にはその資格があると考える尊大な感覚』

『サイコパスたちは、人を無感覚にしてしまうような恐怖などの強烈な感情を経験しても、その影響をあまり受けない』

『万人にほめられる人が、偉大な成功を収めたり、革新的変化を成し遂げたりしたためしはない。プラトン、マハトマ・ガンジー、毛沢東、ネルソン・マンデラなども、誰からも好かれたわけではない』

『「テディ効果」は確かに悪の源泉にもなりうる。だがまた、美しさ、幸福、意味のある生き方、成長の源にもなる。その利点を活用できれば、リーダーとしてより強靭でレジリエントで敏捷になれる』

 

 

アメリカ流の「ポジティブ心理学」や「マインドフルネス」に今一つなじめない人、うんざりしている人には、とても理解しやすい本だと思います。

なお、弊社代表村上和德が書いた「プロフェッショナルのご機嫌力」は「成果を獲得するための行動理論」ですので、ポジティブ心理学とはまったく関係ありません。誤解なきように。

 

さて皆さん、毒を食らってみますか?

 

⇒次回に続く

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